最近、建物や車の浸水被害のニュース・映像を見る機会が増えていませんか?
事実、近年、一級河川でも氾濫危険性が高くなる「3時間で200mm以上の雨、または24時間で300mm以上の雨」は、気象庁の統計開始時点から2倍以上に増加しています。
このような気候・気象条件の変化から、浸水対策は、企業の事業活動の継続(BCP)において、重要な課題として認識されつつあります。
そこで、今回のコラムでは、主に企業(事業活動)を対象として、建物の浸水を防ぐ対策にどのようなものがあり、どういうものを選択すると良いか?など。そのポイントについて解説していきます。
まずは「洪水/内水ハザードマップ」を確認してみよう!
皆さんは、浸水対策と聞いて、どこから検討を始めますか?
そうです。
まずは、会社や工場などの立地周辺が、豪雨や洪水などによって“浸水する可能性のある立地かどうか”を確認することからですね。
こうした、浸水リスクのある立地かどうか?を調べるには…
- 過去の浸水履歴
- (河川・水路・下水道の状況、周囲の土地の高低差など)周辺環境
などについて、個別にあたって調べる方法ももちろん有効ですが、それなりの時間と労力が必要です。
まず最初は、手早く立地周辺の被害想定・リスクが分かる「ハザードマップ」を確認してみましょう。
そのハザードマップにも、想定する災害に応じて「地震」「津波」「土砂災害」などいくつかの種類がありますので、浸水対策の場合は『洪水』『内水(氾濫)』のハザードマップを利用します。
現在、水防法の規定で、“想定最大規模の降雨に対応した洪水浸水想定区域及び洪水ハザードマップの作成が義務化”されていますので、ほぼすべての自治体で『洪水/内水氾濫ハザードマップ』が作成されているはずです。
まずは、会社や工場が立地する各自治体のホームページや、国土交通省の運営する「ハザードマップポータルサイト(外部サイト)」にアクセスして、ハザードマップを確認し、
- 浸水想定区域に含まれるエリアかどうか?
- 浸水想定区域に含まれる場合は、浸水が想定される深さは?
などの情報のリスクをインプットしましょう。
ただし、ハザードマップの利用にも注意事項があります。
以前より気候(気象)の変化が激しくなっていることや、立地周辺の個別要因などにより、ハザードマップで「浸水想定区域」に含まれていないからと言って、絶対に、浸水リスクがない!とは言い切れません。
また、ハザードマップもリスク想定の変化に応じて、情報が更新されていきます。
必ず、最新のハザードマップを確認するようにし、余力があれば…前述の「周辺環境」なども調査・確認して、ふだんから浸水リスクの把握に努めていきましょう。
浸水の被害ってどのようなものがある?
続いて、検討するのは、想定される浸水が発生した場合の被害リスクの想定です。
浸水により受ける直接的な物的被害は、次のようなものが考えられます。
- 建物被害
- 設備被害
- 製品・原材料被害
- インフラ被害
建物や製品・原材料の被害リスクの想定ももちろん重要ですが、災害からの復旧、そして事業の再開・継続のためには、生産設備、電気設備、事務機器などの設備関連のリスクを適切に見積もっておくことが重要です。
また、電気、ガス、水道などの被害に対しては、一企業でできる対策には限りがありますので、広域あるいはネットワーク型の対策もBCPに盛り込んでおく必要があると思われます。
この他、浸水で想定されるリスクには
なども想定され、たとえ、水災に備える保険に加入していたとしても、(契約内容次第で…)保険ではカバーされない範囲が生じる可能性もありますので、注意が必要です。
特に、事業活動の継続に対しては、費用面でだけでなく、事業活動を通常稼働に戻すまでの時間軸もより重要な要素になりますので、しっかりとした検討を進めておきましょう。
浸水を防ぐ「止水性能」- ポイント① –
このように、事業継続に関し、様々なリスクが想定される浸水被害を防ぐ対策として、最も重視すべきポイントは、やはり浸水そのものを防ぐ『止水性能』です。
他の自然災害同様、浸水被害を100%防ぐ方法は存在しませんが、一度、浸水被害を受けた際のリスクの大きさを鑑みると、できるだけ止水性能の高い方法を選択しておくことに間違いはないと思われます。
(もちろん、見積もった被害リスクに応じた対策を採用することが災害対策の原則です。)
具体的な、止水対策の手段としては…
など、一般的にイメージしやすい方法以外にも
などの選択肢もありますので、それぞれの特長を理解した上で、対策を検討することが重要です。
※各浸水対策の具体的な比較は、こちらのコラムを参照してください。
実行に移すまでの「設置の手間」- ポイント② –
最近は、線状降水帯の発生などによって、一定のエリアに短時間に豪雨が集中する傾向も強まっています。そのため、想像を超えて思わぬスピードで浸水被害が始まるような状況も頻発するようになっています。
このため、「止水性能」の次に重視すべきポイントとして、設置の簡単さ、そして、短時間に設置できることを、ここでは挙げたいと思います。
いくら浸水対策の計画をしっかり立てていても、それが有効なタイミングで実行できなければ、結果的には、元も子もありません。
この点、“実は、設置までに以外と時間がかかる!”など、止水手段それぞれに特徴がありますので、しっかりと理解して準備しておくことが重要です。
また、設置までの時間に関して、もう1点。
浸水が始まってから対策を行っても、既に時すでに遅し!ということも実際は発生しがちです。
したがって、設置の簡単な手法を準備するだけでなく…大雨などが予想される場合には、早め早めに予防的な対応をするよう心掛けることも、止水方法の選択以上に、実は重要なポイントだったりしますので、その点は補足しておきます。
ヤッパリ重要な「価格」- ポイント③ –
止水対策の手段を選択する最後のポイントは、当然、価格です。
リスク投資として、この点を疎かにすることはもちろんできませんが…必ずしも、安ければ安いほど良いということではなく…自社の被害想定を見積り、それを防ぐ有効な手段(「止水性能」「設置の手間」)を前提として、その中で、安価な方法を選択するという意味です。
災害に対する防災・減災対策は、ホントに起きるか?いつ起きるか?分からない類のものではありますが、実際に災害が起きた場合は、事業の継続を揺るがすほど甚大な被害になる可能性も否定はできません。
イザというときに、落ち着いて事業を続けられるための必要な投資という視点は、ヤッパリ重要と言えるのではないかと思います。
以上、今回は、まずは「浸水対策を考える!」「浸水対策のポイント」をテーマにコラムをお届けさせていただきました。
次回からは具体的な止水対策手段の特徴・比較などについて、2回に分けてお届けしたいと思います。