ゴールデンウィークも終わり、今年ももうすぐ梅雨のシーズン。
4月24日に、日本気象協会から今年最初の「2025梅雨入り予想」も発表されています。
それによると…
最も早い、沖縄や奄美で「5月中旬」、関東甲信・東海・近畿などでは「6月上旬」の予想となっています。
梅雨と言えば、以前は「シトシト雨」が長く続くイメージもありましたが…
近年は、地球温暖化などの影響に伴い、この季節以後、浸水被害などの災害につながりかねない大雨、集中豪雨が発生する傾向が高まっています。
では、そうした大雨・豪雨災害は、具体的に、いつの時期から起こりやすくなるものなのでしょうか?
今回のコラムでは、過去の「降水量に関する気象データ」や「大雨・豪雨関連の検索データ」を紐解いて、その発生開始のタイミングを確認してみたいと思います。
過去10年間の水害被害額の推移
本題に入る前に、最初は、大雨・豪雨、台風等による被害額の推移を確認しておきたいと思います。
次のグラフは、国土交通省が毎年公表している水害被害額の過去10年間の推移をまとめたものです。
国土交通省公表の「各年の水害被害額(確報値)」よりKTX作成
2018年・2019年に、被害額が極端に大きな水害が起こったため、やや分かりづらくはなっていますが…
2014年には、約2,900億円だった被害額が、2023年には約6,800億円(この年のみ暫定値)と、この10年間で大きな増加傾向を示しています。
次に、同じ国土交通省の公表資料から、各年の水害被害額の上位都道府県をまとめたものが次の表になります。
福岡県を筆頭に、繰り返し大きな被害に見舞われている県も見受けられますが…
注目すべきは、最北の「北海道」から本州南端の「鹿児島県」まで日本全国の道府県が、この表に現れていることです。
日本に住んでいる以上、いつどこで甚大な水害被害に遭遇しても、おかしくない状況を表しているデータと言えるでしょう。
降水量の旬ごとの推移
では、具体的にいつの時期から降水量は増えていくものなのでしょう?
気象庁が公開している過去の気象データから、2021年~今年2025年4月までの「旬ごと」の降水量を確認してみましょう。
気象庁「過去の気象データ検索」のデータよりKTX作成
上のグラフは、東京を例に「合計降水量」の推移をまとめたものです。
例年3月ごろから降水量が増え始め、極端に降水量が多くなるピークは、早い年で「6月上旬」より現われ始めています。
続いては、大雨・豪雨災害の発生に、より直結しやすい「日最大降水量」の推移です。
基本的な傾向は、「合計降水量」のグラフと同様ですが…
降水量100mmを超えるピークが、梅雨の時期の「6月上旬~中旬」と、台風シーズンに重なる「8月中旬~10月上旬」の2つの季節に分かれている点が、上のグラフとやや違う特徴として現われています。
(ただし、東京以外の地域の推移は、おおいに異なる可能性があります。)
ちなみに、日降水量100mmは、道路や田畑が冠水したり、川が増水したり、土砂災害のリスクが高まる降水量で、水害を発生させる下限の量*とも言われています。
* 水害発生には「時間降水量」、そして「地形」「地質」など他の要因も影響します。この値を下回っているから安心という訳ではありません。ご注意ください。
<ご参考> 2025年の動向に関して |
2025年1月~2月の降水量(東京)は、例年よりかなり少なかったものの、3月~4月は、概ね2021年以降と同様のラインで推移しています。
そして、気象庁が発表した今年5月~7月の「3か月予報(4月22日発表)」では、北日本は「平年並か多い」降水量、東日本・西日本は「ほぼ平年並」の予報がされています。
その他、全国的に「高い」平均気温予報となっていることもあり、今年も例年以上に、大雨・集中豪雨災害の発生に警戒すべき夏となるのではないでしょうか。 |
「大雨」「豪雨」検索ボリュームの週次推移
次は、大雨・豪雨災害の発生時期を、ちょっと違う角度のデータから探ってみましょう。
使用するのは、「Googleトレンド」を使って確認できる検索ボリュームのデータです。
このデータからは、指定した検索キーワードに対する生活者の関心の高さの一端を知ることができます。
「Googleトレンド」の検索データよりKTX作成
上のグラフは、検索キーワードに「大雨」を指定して、その推移をプロットしたものです。
(期間は、降水量と同じ2021年~2025年4月)
降水量のグラフと概ね同じ「第22週(5月末~6月初旬ごろ)」からピークが何度か現れるようになっています。
もう一つ、「豪雨」を検索キーワードに指定してみましょう。
大雨と同じく「第22週」に少し高い山が現れる年もありますが…
こちらのグラフでは、「第27週(7月初旬ごろ)」から、さらに一段高いピークが現れ始め、遅い年では「第40週(9月末~10月初旬ごろ)」まで現れています。
もちろん「大雨」「豪雨」の検索ボリュームの多さが、必ずしも大雨・豪雨災害の発生を指し示しているものではありません。
しかし、キーワードの特性上、特に「豪雨」への関心の高さは、それに近しい状況が起こっているものと捉えて間違いないのではないでしょうか。
※実際に、2024年最も高いピークを付けている第39週~第40週は、奥能登豪雨災害の時期と重なっています。
また、こちらの検索データは「日本」が対象となっています。
日本全国の範囲を考える場合は、(前章の「東京」の降水量データより)こちらのデータの方が正しく状況を捉えている可能性もあるかと思われますので、ぜひ参考にしてみてください。
原則「5月中」。遅くとも「6月中」には豪雨災害への備えを
今回確認した2つのデータからは、突然起こりうる大雨・豪雨災害への備えは「5月中」までに完了しておくことが、改めて重要なことがお分かりいただけたのではないでしょうか。
ただし、そこまでに間に合わないからと言ってあきらめるのではなく…
7月以後に再度、豪雨のハイシーズンともいえる状況が続く可能性がありますので、イザというときの被害を最小限に抑えるためにも「6月中」までの備えを目指すことをおすすめします。
浸水などによる大雨・豪雨災害は、思わぬ損害につながることもあり得ますので、まだ対策を検討されていない方は、できるだけ早めに検討を始めてみてはいかがでしょうか。