2024年夏は、大雨の影響を大きく受けたことを覚えていますか?
特に集中豪雨の被害は記憶に新しいですが、台風や大雨の影響で全国的に降水量が増加し、2024年8月27日~9月1日の期間には、平年の月降水量の4倍以上に達した地域もありました。
▼降水量の期間合計値と月平年値の比(8月27日~9月1日)
出典:気象庁 『災害をもたらした気象事例』
「最近たまたま雨が多い」わけではありません。近年の異常気象により、水害のリスクは年々高まっています。実際に農林水産省による田んぼダムの活用や、国土交通省による治水プロジェクトなど、国をあげて水害対策が推進されています。
このような状況から、水害被害を最小限に抑えるために、多くの企業が対策を実施・検討しています。
そこで今回のコラムでは、水害対策に防水板(止水板)を導入したものの後悔してしまった失敗事例と、そこから学べる選定ポイントを解説します。具体的な事例を知ることで、自社に合う製品や設置方法を判断しましょう。
失敗事例から学ぼう!
防水板について調べた結果、「専門的な用語が多くて分かりづらい」「どのメーカーでも同じように見える」「そもそも何を基準に選んだらよいか分からない」など不安をお持ちの方も多いかと思います。
実際に「導入してから後悔した」というお話を、企業様からお伺いすることもあります。最悪の場合は、一度導入した後に、別の防水板を購入しなおすということも起こりえます。
今回は実際にあった事例から学ぶことで「知らなかった!」を防ぎ、失敗のリスクを回避しましょう。
また、社内説明時などに「過去の失敗事例」を示すことで、対策の必要性を納得してもらいやすい効果もありますので、是非参考にしてみてください!
次の章からは、失敗事例と防止するための選定基準についてご紹介します。
【失敗事例1】止水性能に満足できない
- 事例
安価な防水板を購入したA社。しかし、実際に冠水が起きた際に止水性能が不十分で、予想以上に水が漏れてしまった。
「どれも同じだから」という安易な気持ちで防水板を選ぶと、浸水テストをしたり、実際に大雨の時に利用した際に「思っていたより水が漏れてくる」ことに気づきます。
選ぶポイント:止水性能をキチンと確認(JIS規格「JIS A 4716」を参考に)
JIS規格「JIS A 4716」とは
2019年11月に制定された、「漏水量に基づく等級」が定められた規格です。以前は、浸水防止設備の性能基準が団体ごとに異なっていましたが、この規格の制定により、ユーザーが統一基準で製品を比較・選定できるようになりました。
JIS規格の等級はWs-1~Ws-6の6等級からなっており、最も止水性能が高いのがWs-6(漏水量0.001 m3/(h・m2)以下)です。
Ws-1とWs-6の漏水量を比較すると200倍以上もの差があります。高い止水性能を求める場合はWs-5、Ws-6に相当する製品を選ぶことをおすすめします。
選ぶポイント:JIS規格の記載があるか
防水板のカタログやホームページに、JIS規格の基準に相当する記載の有無を確認しましょう。記載がある場合には基準に沿った止水性能を期待できます。逆に、止水性能について具体的な記載がない場合はリスクがあると言えます。
JISは規格であり法規ではないため、「漏水量による等級」も公的機関が認定するわけではなく、各社が独自に検査し、その結果を公表しています。
検査方法は「自社調べ」と「第三者機関調べ」の2種類がありますが、公平性の観点からは「第三者機関調べ」の方が安心です。
止水性能実験の動画を公開している企業もありますので、参考に見てみることもおすすめです!
止水性能実験の様子(KTX)
【失敗事例2】設置費用が想像以上に膨らんだ
- 事例
B社は「性能が高く利便性も良い」と評価された防水板を導入。しかし、いざ設置工事が始まると、地面や壁を削る大掛かりな施工が必要となり、予想を超える費用が発生。さらに工期も延び、店舗の営業にまで影響が出てしまった。
止水性能を維持するために、間口の地面を削って、専用の金具をとりつけて、コンクリートで固めて…などなど、大掛かりな工事を必須とする製品は多くあります。
選ぶポイント:設置工事の「作業時間」と「作業の影響時間」を確認
防水板の設置は、工事が発生するものがほとんどです。止水性能が高い製品は基本的に「設置工事がある」と考えておきましょう。「工事不要」と書かれている製品であっても “状況により” と補足がついていますので確認してみてください。
例えば、防水板をセットする枠をビス止めする作業が1時間で終了したとしても、その他にもコーキング処理を併せて行うためシリコンが乾くまで一晩触らないようにする必要があったり、床面をコンクリートにする場合は通行ができないなど…作業によって影響を受ける時間も確認しておきましょう。
工期が長引けば施工費も増え、店舗や営業所では営業休止のリスクも発生しますので、事前の調整作業も発生することを考慮しておく必要があります。
設置工事の方法・規模は、製品による違いが表れやすいところです。「止水性能は高いけど、大掛かりな工事が必要な防水板」よりも「止水性能が高くて、工事は少ない防水板」であることを意識するのがオススメです。
【失敗事例3】構造が複雑で取り扱える人が限られる
- 事例
C社では導入から半年後に豪雨が発生しました。イザ設置を始めると、対応する従業員が「どうやって設置するのか分からない」「部品が合っているのか分からない」と戸惑い、設置に手間取りました。最終的に、浸水の恐れがあるエリア全体をカバーする前に水が流れ込んでしまいました。
「設置工程が多い」「説明書を読まないと分からない」といった理由から、結局はメーカーから説明を受けた担当者など、限られた人間しか使えないという状況が発生します。
選ぶポイント:直感的に使えそうか
このように、直感的に使えない防水板では、いざというときにスムーズな対応ができない可能性があります。特に、普段設置作業に関わらない人が対応するケースも多いため、誰でも簡単に設置できるかどうかを選定基準に入れることが重要です。
様々なメーカーで「防水板を設置する動画」がアップされていますので参考にしてみてください!
防水板の運用は「買ったら終わり」ではありません。実際に運用できるかが全てです。誰でも簡単に設置できる構造のものを選び、定期的に設置訓練を行うことを強く推奨します。実際に従業員が手を動かすことで、有事の際に確実な対応ができる体制を整えましょう。
【失敗事例4】サポート体制が整っていない
- 事例
D社では、工場の出入口に設置するために防水板を導入しました。しかし、いざ取り付けようとした際に、設置方法が分からず施工業者に問い合わせたところ、「メーカーに確認します」と言われたまま、数日経っても返答がありませんでした。
困り果てた担当者が直接メーカーに連絡を試みましたが、窓口が海外にしかなく、時差の影響でスムーズな対応が受けられず、結局取り付けに大幅な遅れが発生しました。
サポート体制が不十分な業者や、メーカーとの連携が不透明なケースでは、トラブル発生時の対応が後手に回ることが多いです。特に海外メーカー製の場合、問い合わせ対応に時間がかかることもあります。
選ぶポイント:日本製でサポートも安心
サポートでまず重要な要素は「スピード」です。導入前に「迅速に相談できる窓口があるかどうか」をしっかり確認しておきましょう。
そこで注目していただきたいのは、サポート窓口と技術的な確認をする設計、製造現場の距離が近いことです。仲介する人・会社が多いと伝言ゲームのように余計なやり取りが発生し、返答に時間を要する可能性が高くなります。
選ぶポイント:製造元を確認
パッと見で分かりづらいですが、海外製の防水板も多く市場に出回っています。アジアやヨーロッパなど、浸水被害が発生している国で実績を積んでいるメーカーが多い印象です。そういった製品を日本の会社が代理店契約を結ぶなどして販売しています。
海外メーカーの製品を選ぶ場合には、サポート体制と、対応範囲を事前に確認しておくと良いでしょう。それでも不安が残る場合には、日本製の製品を選ぶことをおすすめします。そもそもサポートがない業者や、複数の業者が仲介しているケース、メーカーや製造が海外の場合に、対応に時間を要することが多いようです。
防水板はほとんどの人にとって初めて扱う製品だからこそ、困ったときに相談できるサポート体制が重要です。
また、止水性能を最大限に発揮するには、設置環境に合わせた調整が欠かせません。間口の大きさや材質、凹凸の有無、使用方法など状況はさまざまで、事前の現地調査や設置後の微調整が必要になることもあります。柔軟な対応ができるメーカーなら、こうした調整を適切に行い、性能を最大限引き出すことができます。
【失敗事例5】故障して正しく設置できなくなった
- 事例
E社では防水板設置の訓練を定期的に行っていましたが、ある日「部品が見当たらない」「支柱が曲がってしまい、正しくはまらない」といったトラブルが発生しました。原因を調べると、小さなパーツを紛失していたり、前回の設置時に無理な力を加えたことで一部が変形していたことが判明しました。
防水板本体は頑丈なものの、後付けの部品や可動部分は意外とデリケートです。特に、組み立てが複雑な製品は「部品の紛失」や「誤った設置による破損」が起こりやすく、イザというときに使えないリスクが高まります。
選ぶポイント:3点
✔ 独立した部品が少なく、一体型に近いもの → 紛失や組み立てミスのリスクを減らせる
✔ 耐久性のあるシンプルな構造 → 余計な可動部分がない分、破損しにくい
✔ 修理・交換の負担が少ないもの → 万が一のトラブル時でも対応しやすい
防水板は精密な設計が求められるため、少しの歪みや欠損でも止水性能に影響が出る可能性があります。修理には手間や費用がかかるだけでなく、最悪の場合は買い替えが必要になることもあります。中長期で見たときに「壊れにくい」ことは手間・費用面においても大きなメリットです。
高機能な製品は魅力的ですが、防水板は「確実に止水できるか」が最優先です。シンプルな構造でありながら高い性能を持つ製品は、それだけ技術力が高い証でもあります。
防水板を選ぶ際は、長く使い続けられるかという視点も忘れずに、トラブルなく運用できる製品を選びましょう。
シンプルな構造が長持ちの秘訣
構造が簡単であるのにも関わらず性能が良い製品は、高い設計・解析・製造技術で作られていると言えます。部品を取り付ける、金属を厚くするなど、手を加えることで性能を上げることよりも、様々な工夫や検証を積み重ねた無駄のない洗練された製品は、不具合や故障のリスクも少なく、総合的にも品質が高い印象が強いです。
以上、失敗事例から学ぶ、防水板選定のポイントをご紹介しました。
皆様の、防水板(止水板)選びの基準の参考になれば幸いです。